レースに出るなら長所を伸ばすか?短所を伸ばすか?

シクロワイアードにこんな記事がありました。

ツール・ド・ラヴニール第4ステージ−イギリスU23王者がゴール3km前から飛び出し優勝

 

ツール・ド・ラヴニールというのは、若手選手(U-23)におけるツール・ド・フランス的な立ち位置のレースで、プロ選手になるための登竜門とも言われています。歴代の優勝者の中には、往年の名選手であるグレッグ=レモンやミゲル=インデュライン、ローラン=フィニョンの他に、近年活躍しているナイロ=キンタナやウラン=バルギルなどが名を連ねているため、このレースでどのような成績をおさめることができるかは、自転車選手としての人生を大きく左右すると言っても過言ではないと思います。そんなレースにU23の日本人選手もほぼ毎年参加しており、世界に迫ろうと挑戦し続けているわけですが…今年はどうなるか楽しみです。

 

 

さて、こちらの記事を読んでいる中で、日本人選手の活躍も楽しみに読んでいたわけなのですが、今回興味が湧いたのは、オランダU23チームナショナルチーム監督に対して【あなたが日本選手を指導する事になったらどんな事を選手に云いますか?】という言葉への回答でした。ペーター監督はこのように答えています。

 

「まずは、その選手に適していない事はやらせないね。《中略》世界のトップレベルに上がりたいのならば、自分の適性を探し、それを武器に成績を出す。適性を活かさずに中途半端な特性の無い選手になると、レベルの高い集団については行けるけど、勝てない選手になってしまう。」

 

ごもっともだなと思いながら、自身が各種選手を指導する上で考えていることをつぶやきました。

 

日本国内はレースを開催する場所にもよりますが、ヒルクライム的要素が含まれたレースが多くなるため、どうしてもクライム能力の向上を目指す人を多く見受けられます。実際、その影響なのか「FTPを向上させたいんですけれど、どうしたらいいですかね?」なんて声をよく聞いたりします。確かにヒルクライム能力はFTPに左右されることが多いですからね。それを聞くたびに、もしかしたらこの方は自分が目指すべき物や自分の持ち味を失っている人が多くいるのでは?と感じます。

 

勝つことを考えた時にはFTPを向上させることが最低条件とも限りません。選手としてレースに参加するなら、必ず自身の”適正”を知っておいたうえで、それが生かすことができるレースに参加すべきだと、私は考えています。※国内実業団や各種イベントなどは参加料高いから、ある程度結果もついてこないと寂しいお金が…。

FTPの向上だけではレースを完走することができない場合もある。

2017.03.17

 

長所と短所を見極める方法

昨今の自転車競技はスポーツ界の中でも感覚や自身のフィットネスレベルを視覚化できるツールが非常に多いため、様々な情報を元に自身がどのような選手なのかがわかるようになりました。そのツールの中で、最も代表的な物で言えばやはりパワーメーターであり、そこから得られる情報は選手にとってもコーチにとっても有益なものであります。そのパワーメーターを使い、様々なトレーニングを重ねてデータを得ていくうちに、自分自身がどのようなタイプの選手なのかがわかるパワープロフィールというものができます。

自転車(ロードバイク)でパワートレーニングを行う方法 Part.3 パワープロフィール編

2017.05.26

 

本格的なトレーニングをしていない状態では20min(FTP)の数値が高く出ると思いますが、1分や5分のインターバルトレーニングや5秒のスプリントトレーニングなどをある一定の期間継続的に行うとある程度各種パフォーマンスが向上し、蓄積されたデータからどの能力が高く、どの能力が低いのかを視覚化することができ、自身の短所長所を見ることができるようになります。そこで見えてきた各数値の上限が、自身のサイクリストとしてのタイプを表していたりするわけです。

 

20分が高ければタイムトライアルやヒルクライムに、5分が高ければパシュート(トラックの団体追い抜き)に、1分が高ければ1kmTTに、5秒が高ければスプリントに向いている、あるいは得意としている、とその数値や視覚化されたグラフから読み取ることができます。また、疲労プロフィールを見ることができれば、ロングスプリントが向いているのか、アタックをして少数名のグループからスプリントしたほうがいいのかなど、より具体的に知ることができます。

 

また、各時間帯の数値が低ければ、さきほど書いた内容とは反対になり、向いていない、あるいは苦手であるということも知ることができます。まだまだ改善の余地があり、ということなのかもしれませんが、ある一定のレベルまでいけば止まるものは止まるでしょう。

 

レースや各種イベントに参加したことがある方は、それらの数値を見たことがあるでしょうか?それを知ることで、自身の適正を知りつつ、何にフォーカスしていけばいいかわかるので、トレーニングや自身が参加するレースの役立つでしょう。

 

※大学在学中に、スペインでは中学生までさまざまなスポーツさせて、卒業と同時に自身の適正なスポーツに振り分けられた育成プログラムがあると聞いたことがあります。また、ロシアでは身長と四肢の長さの比率から、各種スポーツの適正を割り出して選手を教育したと聞きました。

 

長所を伸ばすか?短所を伸ばすか?

例えば、2017年のツール・ド・フランスで山岳賞を獲得した、ヒルクライムに対して天才的な才能を持つ選手であるウラン=バルギルに、競輪選手がヒルクライムの練習に特化して挑んだ場合、勝つことができるでしょうか?正直、勝てないと思います。

 

反対に、国内競輪選手にウラン=バルギルのような選手がスプリント勝負を挑んだ場合、勝つことができるでしょうか?これも同じように、勝てないと思います。

 

選手として勝負で勝つこと、あるいは活躍することを考えた場合には、自分の長所にフォーカスしたトレーニングをしっかりと行い、その長所が生かされるレースに参加することで”結果”が伴います。いくら短所にフォーカスしたところで、あまり目立つ成績を残すことはできず、自身が求めていた結果とは反対の方向へいってしまうでしょう。それを見極めた上でトレーニングプログラムを組み、しっかりとやり抜くことが大切です。

 

改めてお伝えしておくと、同じような能力を持っている人たちが集まる中で、全てのレースで勝つことができるなんてことは無理です。競輪選手もそうですが、自分の武器を持っています。勝ちたい、成績を残したいと思うならば徹底的に武器を磨きましょう。

 

プロアスリートや社会人アスリートの場合は、トータルのトレーニング時間が無駄になることと、苦手に取り組みすぎた結果、自身の長所が最大限伸びるはずであろう”成長期”の時間すら無駄にし、才能を無駄にしてしまう場合もあると思うので、短所に対する努力は必要な限りでいいと思っています。※ただ、忘れていけないのが短所が原因で勝てるはずのレース展開で勝てないのならばしっかり短所を「補うように」トレーニングをすべきです。

 

勝負の世界に身をおき、常に結果を求め続けるならば、自分自身がどこに適正を持っており、何をすべきなのか、どこの世界で勝負をすべきなのかをしっかりと考えてトレーニングを積んでいくべきだと思います。

 

 

また、レースを考えることなく「自分は順位を競うのではなく、自身の成長が楽しみでヒルクライムが適正ではないけれどヒルクライムを頑張ります」という方もいらっしゃると思いますが、それならそれでいいかもしれません。ただ、適正を考えてみた時にはヒルクライムよりも平地でのTTのほうが得意なタイプかもしれませんし、同じように記録を狙う種目で言えばトラックレースで適正を持っていて、それにより自身に対する成長の結果だけでなく順位のついた結果を求めることができる場合もあるため、なんとなくそれらも挑戦したほうがお得かなと考えてます。

 

自転車にも色々ありますから、それぞれを楽しんでみるのもありだと思いますよ。

超一流になるのは才能か努力か?
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レースに参加される皆さん。長所を伸ばしますか?それとも短所を伸ばしますか?私なら短所は長所を生かすために補うだけにしておき、しっかりと長所を伸ばしたほうが楽しいかなと思います。もちろん選手として、ですけれどね。

 

あとがき

2016年秋ごろから、マトリックス・パワータグの吉田隼人選手をコーチングしてます(吉田隼人選手のブログはこちら)。

2017年のシーズンインから国内で4勝しており、その他にも多くのレースで表彰台に登ってくれています。これはオフシーズン中に僕が彼のフィットネスレベルを伸ばしたというよりは、もとからある彼のフィットネスレベルから適正を考えて”このレースは勝てる”とオフシーズン中に伝えていたこともあり、それに彼自身が集中して取り組んでくれたからだと思います。※もちろんマトリックス・パワータグという素晴らしいチームとの連携も大きく影響した結果です。

 

レースで成績をおさめるためには、選択と集中が求められるのだと、改めて思い知らされました。もちろんそれはスポーツの世界だけでなく、仕事でも同じこと。ということで、私も彼に負けじとお仕事を頑張ります。

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