ジュニア・ユースの選手に対するトレーニングの指導者的悩み




先日、Twitterに以下のような情報がNATA(National Athletic Trainers Association) より流れていたので、共有したいと思います。

こちらは”ユーススポーツの安全に行うために推奨する要項”が書かれています。簡単にまとめると、以下の通りです。

・1つのスポーツに専念する時期を、可能な限り遅らせよう。
・1つのチームでプレイしよう。
・1年間で8ヶ月以内に抑えよう。
・1週間の運動時間が年齢を超えないようにしよう。
・1週間の内、2日間以上休息を挟みましょう。
・次のシーズンまでしっかりと休養を取りましょう。
※各項目事に、細かい点が書かれているので、そちらも読んでみましょう。

 

NATAがこの情報を発進するということは、きっとアメリカ内にて”早期に専門種目を絞り、徹底的な練習・トレーニングが行われて潰れていく選手が多いのでは”と考えられますが、どうなんでしょうか。こちらに関しては、アメリカのスポーツ事情を全て把握しているわけではないので、ただの推測です。

 

ただ、2019年にNew York Timesのインタビュー記事にて、100m世界記録保持者であるウサイン・ボルト氏が、このようなことを言っています。

Q.If you were talking to a 13-year-old who showed promise and had real sprinting talent, what are the three things you would tell that 13-year-old to do?

A.At that age it should be just about enjoyment. A lot of people put so much pressure on the other kids to do well, but at 12 or 14, you just get to high school, just have fun, enjoy it, because when you put too much pressure on these kids too early they kind of lose their way because there is all this stressing. I have seen so much talent that has been destroyed because there is so much pressure on them at a young age.

引用 : New York Times / July 27,2019

ジャマイカの短距離界でもこのような話をするということは、世界中でジュニア・ユースの選手育成に関する取り組みに問題があるのでしょう。

 

さて、突然ですが、私の指導に関するお話をしたいと思います。

 

現在、私もジュニアアスリートの指導に携わっています。携わっている種目として自転車競技はもちろんですが、陸上競技、ゴルフなどがあります。(元陸上競技者ですが、不思議なことにゴルフは全く経験がありません)。中には”将来プロ選手を目指して”という子供もいて、非常に嬉しく思っています。そんな彼らを指導するにあたり、正直悩ましいことがいくつかありました。

 

・どれぐらいから専門性を持たせるのか?
・1週間のTraining Duration(TD:積算運動時間)をどうするか

 

この点に関して、少し自分なりの考えをまとめてみたいと思います。

 

 

いつ頃から専門性を持たせるべきか

 

こんな私もスポーツ指導者としての道を歩み始めて9年も経とうとしています。サイクリストやトライアスリート、競輪選手だけでなく、野球、実マラソン、ゴルファー、ジョッキー、フィギュアスケート、テニスなど数多くのスポーツ選手を指導してまいりました。そんな彼らとの話の中で、”いつからその種目に専念しているのか?”という話をすることがあります。その答えの多くは”小学生以下から”が多かったのを記憶しています。※伊藤調べ

 

一回話は飛びますが、私と同世代の有名選手として福原愛選手がおりますが、彼女の場合は幼少期の頃より泣きながら卓球をしていた映像が何度もテレビに写っていたので”まあそれくらいからでも遅いんじゃないかなぁ”と感じていたことがありましたが、指導者目線で冷静に考えてみると”福原愛選手のケースは偶々当てはまったケースであり、同じようなことをして違うスポーツに適性があったのに潰れていった選手っているんじゃないかなぁ”と思うことがあり、今に至ります。

 

さて、話を戻しますと、この小学生から専門的に行うという選択肢が、先ほど上げたNATAのTwitterの中にある”Delay specializing in a single sport as long as possible”のDelayに当てはまるのか?という疑問点が私の中に浮かびました。

 

ここでヒントになるのは、私が大学在学時に選択した”各国のスポーツ政策”の授業にて、ヨーロッパ(主にスペイン)の総合型スポーツクラブの取り組みでした。その取り組みとは、小学生・中学生までは様々なスポーツを経験させ、高校生あたりの年齢で専門種目を定めてチャレンジさせるというないようです。興味を持った私は、授業後に”そのほかの国はどのように取り組んでいるのか”を教授に聞きに行ったところ”専念させるのが中学生なのか、高校生なのか違いますが、様々なスポーツを小学生時代に経験させるのは同じ”という話を聞きました。※別の話になりますが、旧ソ連、東ドイツ時代の話が面白かったです。

 

彼らの身体的成長時期にもより、違うと考えられますが”中学生ぐらいを目処に専門とする種目を決定して取り組むのがいいのかなぁ”と考えています。そのため、指導させていただいている小学生以下の子供場合、そのご家族には”中学生までは、いろんなことを経験させてあげてくださいね”と伝えさせていただいてます。この辺りは、そのほかの指導者によっても考え方があると思うので、参考程度に。

 

ただ、小学生〜高校生あたりにかけて、どんな指導者に出会えるのか。これはすごく重要ではないかなと思います。

 

1週間の運動時間と才能のお話

 

自分が専門とする競技を選んでから”1週間に何時間運動することを推奨するといいのか?”というお話に移ります。こちらは、NATAの推奨する内容によれば”1週間のTDは年齢以下に抑える”とされています。わかりやすくいうと、15歳である場合は1週間の運動時間は15時間以下に抑えましょう、というものです。果たして、現状はどうなのか?また、プロ選手たちはどうだったのか、と聞いてみました。

 

国内自転車競技のトップ選手の話を聞くと、やはりジュニアの頃から自分の年齢以上の時間をトレーニングに割いていることも聞きました(※16歳の頃には既に週25時間)。また、野球選手やゴルファーの話を聞くと、中学生の頃から週20時間以上の練習は当たり前のように話していました。そうした選手たちが学生時代に全日本、アジア大会で優勝するなどの”目に見える結果”を残しているからこそ、きっと多くのジュニアアスリートたちが”たくさん練習しないと強くなれないんだ!!””たくさん練習することで強くなれるんだ!!”と頑張って練習するのだと思います。

 

その競技に全てをかけている場合、または全てをかけたい場合、そうなるのはわからなくもないのですが、多くの人は怪我をします。そうした友人たちを中学・高校・大学で見てきましたし、その中の一人に私がいます(高校時代に陸上競技で肘の靭帯断裂し、競技ができなくなりました)。当時のは私にとって、大好きだった陸上競技ができなくなることほど、悲しいことはありませんでした。やはり練習しすぎというのも問題で、NATAが推奨しているガイドラインのように、年齢以下の時間の競技練習の中で、運動することをお勧めします。

 

そんなことを行っていると、このブログを読んでいる人の中には”俺はプロになりたいからそう言っていられないんだ!!”と思う人もいるでしょう。

 

いきなりですが、とんでもなく夢も何もない話をしたいと思います。

 

なんでも1番を獲るためには、必ず何かしらの”才能”が必要だと思います。様々な才能を見聞きしますが、ここでいう才能は身長や骨格、筋繊維のタイプや心臓や肺のサイズなどの身体的特徴における先天的な才能です。ほんのちょっと練習しただけで、全国大会優勝してしまうケースもありますし、どれだけ練習しても1位にはなれないケースもあります。そこには才能が関係しているかなと感じています。

 

さらに掘り下げて、才能という話をしたいと思います。

 

中学生の頃にシニアリーグに所属していた先輩がいました。彼は”野球のために足が速くなりたい”ということで、私が所属していた陸上競技部に所属していました。その先輩は、あくまでも野球メインだったので、陸上競技に対する競技練習が少なかったのですが、中3で全日中2位という結果を残し、高校・大学では日本一に輝きました。その時に、初めて”才能とはこういうことなんだな”と感じました。

 

プロの世界は、そうした才能がある中でも更に優劣があり、そこから更にシビアな戦いを強いられます。

 

上記の話を踏まえ、各個人の才能がどの時点で判明し始めるのかですが、個人的には、現状”小学校高学年〜中学生”あたりで見えてくるのかなと考えています。その中で、自身の身体的特徴やフィットネスがその競技に対する適性があれば、少ない練習時間でも才能を発揮できるのではないかなと考えています。もし、高校生〜大学までの間である程度自身が考えている目的目標に達ない場合は、何かほかの手を考える必要があるのかもしれませんし、競技スポーツとして取り組むのではなく生涯スポーツとして取り組むという視点を変える必要もあると考えています。

 

また、自身の話だけでなく、仮にその子の才能を両親や指導者が見つけた場合、どうするすればいいのか。”才能ある子は伸びるのだから、その専門種目が嫌いにならないようにNATAが推奨する要項を1つの参考として、一気に才能が爆発するまで待つこと”だと思います。※選手の性格などにもよるので、一概には言えませんが。

 

 

 

怪我から選手を守るための一つの実例

 

運動時間とは別のお話になりますが、アメリカの野球の話を取りあげます。

 

アメリカの野球界にはPitch Smartというガイドラインがあり、1日における年齢別の投球制限数を表します。これがあるのも、才能ある選手たちが”投げ込み”によって肘を壊してしまし、選手になれなかったり選手寿命が縮んでしまうことがあり、それを抑えるために作られたものになります。ちなみに、日本国内の高校球児たちにもそのような問題が取りあえげられたことがあったため、2020年より”1週間に500球”という制限を設けることが提示されています。今後の野球回の怪我に関するデータと、プロ選手になった選手たちのその後のデータも気になりますね。

 

こうした数値も、医学に基づいた統計を出した結果から定められたものだとは思いますが、各競技団体で選手の体を守る取り組みを増やしていき、競技スポーツにおける選手寿命の長期化だけでなく、生涯スポーツとして取り組む選手の怪我の防止につながればいいなぁと考えています。

 

どんなに才能ある選手も、取り返しのつかない怪我をしてしまえばそこでおしまいです。

 

現状の日本国内の小学生〜高校生のスポーツ指導の現場はわかりませんが、日本の自転車競技、広域で言えばエンデュランススポーツはどのようにしどうしているのでしょうか。いつかその辺りもガイドライン化されるかもしれませんね。




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